
第一次大極殿院大極門(南門)の組立について
このページでは大極門(南門)の初重組立について、ご紹介します。
初重というのは、門の一階部分の呼び名です。【その1】と【その2】に分けてご紹介します。この頁は【その1】です。
まずは基礎工事が行われました。古代も整地をしていますが、現代の建築基準法でも大丈夫なように、鉄筋やコンクリートも使って、丈夫に造ります。第一次大極殿院の全景は下の写真のような感じです。

もう少し大きい写真で、鉄筋などを使って、しっかり作っていることが分かるかと思います。左上の建物内で、木材の加工なども同時に進んでいました。

この写真はクレーンから撮影しています。かなりの高さから撮影していることが分かりますか?

基礎を作り終わった後で、素屋根と呼ばれる覆い屋を作ります。門の建設中、雨などの気候から建設中の門を守ります。高い部分の工事をするために必要な足場も設置されています。完成時を想定した南門(大極門)の絵がプリントされたカバーです。
素屋根の前に設置されている階段は見学用で、工事の様子を見ることができます。

素屋根の中はどうなっているのでしょうか?
ということで、下の写真が、素屋根の中になります。

そして、素屋根の中に、礎石を置き終わった状態が下の写真になります。礎石は国内の道路工事の際にできた石材を利用したものだとか。色々な形がありますね。
なんと、基礎からここまで大体一年かかっています。

門の中心になる部分にコンクリートが設置されたのが下になります。

増えた部分をズームすると・・・綺麗に礎石の形が整えられていることが分かります。真ん中に出っ張りがあるのは、現代の技術で倒れないように補強するものです。この礎石の上に柱を立てていきます。

下は、立柱式と呼ばれる儀式の様子です。柱を代表者が引っ張って立ち上げています。もちろん現代では、上でクレーンを利用して、人が引っ張るのは形式上です。
儀式の前に一度主要な柱を立てておき、柱の垂直を検分してもいるそうですが、とりあえず立柱式は柱の根元を槌で打ち固める作法を行う儀式(『国史大事典』建築儀礼の項)です。
白い服を着ているのが大工さんの一部です。
柱は国産ヒノキで、樹齢約200年、乾燥に一年半から10年もかけたものです!ヒビも見えますが、強度に問題はないそうです。江戸時代位からは、ヒビが入る前に入れてしまう「背割り」という切込みを入れる技術が発達しますが、南門(大極門)は古代なので、人工的な切れ込みは入れていません。
この儀式の後に、第一回特別公開が行われました。

柱を立てる時には、礎石に合わせて、木材の底部分を削って調整し、倒れにくくする必要があります。専門用語では「ひかりつけ」と呼びます。光すら漏れる隙間がないようにぴったり石と木を調整するという意味のようです。
礎石だけ残っている史跡は各地にありますが、真ん中が出っ張っていたり、掘り窪められているのは、このためなんですね!この石の加工を「柱座(はしらざ)」と呼びます。
柱を立てただけではグラグラしてしまって危険なので、立ててすぐに上部をつなぎます。
上部をつなぐ木材を「頭貫(かしらぬき)」と呼びます。この頭貫をつけた状態が下の写真になります。

柱の上に切込みを入れて、頭貫(かしらぬき)が、きれいにはめ込まれていることが分かります。遠くから見ると下の写真のようになります。

ちなみに、一階部分はこんな風になりました。柱が整然と並んでいます。右側には既に壁がはめ込まれていますし、左下にはコンクリートですが基壇の中央には、階段の形も見えます。古代の基壇や階段は石をはめ込んだものであったことが、発掘調査から分かっています。どこに設置されていたかによって、地覆石(じふくいし)や羽目石(はめいし)、葛石(かずらいし)などの名称があります。

頭貫(かしらぬき)という木材は木でしたが、それを補強する金属プレートを入れたのが、下の写真の状態です。

頭貫(かしらぬき)の上に「大斗(だいと)」という升(ます)に似た木材に、四面に切れ込み(上から見ると十字の切れ込み)をいれた木材と、「肘木(ひじき)」というボートを横から見た形に似た木材に切れ込みを入れた木材、更に上に「巻斗(まきと)」という二面だけ切れ込み(上から見ると長方形の切れ込み)を入れた木材を置いたものが下の写真です。
屋根をつけるためのつな ぎ役をする木材の一つで、これを「一の肘木(いちのひじき)」と呼びます。この上にもどんどん肘木を積んで、実用だけでなく、見た目も美しくなるように組み立てていきます。これらを「組物(くみもの)」や「斗栱(ときょう)」と呼びます。

下は「二の肘木(にのひじき)」を組み立てたところです。青い矢印部分は組物の下半分に当たりますが、少しきれいな見た目になってきました。
上の写真で切れ込みを入れてあった部分に、二の肘木と呼ばれる木材をはめ込んだ状態です。通し肘木とか、隅肘木とか細かく分かれた名前もあります。
この部分を横に繋ぐ木材は、一の肘木と断面の太さが違うと、梁(はり)と呼ばれます。梁(はり)には、小梁(こばり)や繋梁(つなぎばり)、虹梁(こうりょう)などいくつも種類があります。

下は、二の肘木に開けられた四角いボコボコに、「天井組子(てんじょうくみこ)」と呼ばれる木材をはめ込んだ状態です。ほぼ正方形に近い形状で、格子(こうし)に似て いますね!
日本古代にもチェック柄に近い意匠は存在したんですね!

この「天井組子(てんじょうくみこ)」をつけた状態を下から見てみると、素敵なんです!
朱塗りの組物の間から、光の洩れ出る様子が、とても美しい!
すぐ後に、天井板を張ってしまうので、この様子は大工さんでも一瞬しか見られない状態です。

二週間後には、既に天井板の張込が終わっていました。
上からだと、天井組子は見えなくなっています。

天井板の上から、三の肘木(さんのひじき)と呼ばれる木材をはめ込んだ状態が、下の写真です。

横から見ると、随分背が高くなってきていることが分かります!

さて、ここまでの色々な木材、仕上げは大工さんの手仕事になります。槍鉋(やりがんな)という道具を使って、す~っときれいに表面を整えていきます。江戸時代以降の鉋とはまた形が異なるのですが、道具も古代からあったものを使っているのです。
大工さん、ステキな笑顔ですね!
出てきた鉋屑(かんなくず)は削り華(けずりばな)とも呼ばれ、アートに使われることもあります。
「その2」に続きます!
