
このページは、2021年1月23日~3月28日に平城宮いざない館企画展示室で行われた、平城宮跡歴史公園第一次大極殿院南門復原整備工事記念特別展として行われた「鬼神乱舞―護る・祓う鬼瓦の世界―」展についてのページです。
奈良文化財研究所のホームページ内、なぶんけんブログでも扱われておりますので、併せてご覧ください。

このページでは、会場に来られなかった方のために、展示の概要を解説します。と言いますのも、新型コロナウイルスの影響で遠方から訪れにくいという時期に開催されたこと、また、リモートでも展示を見られることが、これからの博物館にとって、重要なことと考えるためです。(来場者数の代わりに、アクセス数をカウントするなどで比較評価はできます)
とはいっても、この展覧会、コロナ禍にも関わらず、前年度越えの入館者数となった点では、超珍しい展覧会だったことは、ちょっとすごいでしょ!と自画自賛しております。

まず、入口を入ると、第一次大極殿院大極門の復原過程で、鬼瓦研究が進展したことが紹介されます。
これが第一章で、平城宮第一次大極殿院南門の復元研究となります。
どのように変わったのかは、以下の奈文研ブログをご覧ください。
https://www.nabunken.go.jp/nabunkenblog/2020/08/20200817.html
瞳の表現の有無や、人中(鼻の下の筋)、尺骨茎状突起(手首のぐりぐり)、下部の刳りの大きさなどが以前の復原と変化しているのです。
復原工事中の最新写真や、鬼瓦の3D画像を流すなどの試みも行われました。
さらに、鬼瓦の初見について、史料を紹介しました。考古学の展示だとここまで書いたパネルを展示するのは珍しいと思いますが、主担当した私が元々、日本古代史を専攻していたため、やはりこれ位は載せたいという希望を通してもらいました。
第二章では「鬼瓦を体感」として、法隆寺の鬼瓦の中でも大きいものを露出展示しました。ガラス越しでないため、迫力が感じやすくなります。
屋根の上にあると、小さく見えますが、実際はこんなに大きいんだということを体感してもらえたかなと思っております。
この鬼瓦、下から覗くと内部が中空になっていることが分かると思います。4つ展示した内、二つは中に電球を仕込んで、鬼瓦の目が光るように見えるのです(笑)・・・遊び心も大切ということで!

第三章では、平城宮以前、飛鳥時代にみられる、鬼の象られない鬼瓦を紹介しました。下の写真の右端になります。
蓮華模様とか、線を二重に入れただけというものもあります。また、コンパスのような道具を使っていた痕跡が分かるものもあります。

第四章は、平城宮と平城京の鬼瓦の紹介です。鬼瓦にも各種あり、大きさは建物の大きさによって様々ですし、模様も実は色々あります。
基本は鬼瓦ですが、平城宮跡第一次大極殿院で使用された鬼神の全身像ではなく、鬼の顔だけが多いのです。鬼面紋鬼瓦というものです。
鳳凰紋や、唐草紋、無紋なんて手抜きしたものもあるのです。
また、南都七大寺という平城京の鬼瓦には、珠紋という、丸い模様を端に一面かたどったものもあります。

第五章は中世、鎌倉時代と室町時代の鬼瓦の紹介です。
平安時代まで、鬼瓦は平面的な形が多く、型作りといって、型に粘土を押し付けてから焼きしめていました。
鎌倉時代になると、立体的な鬼瓦となり始めます。手作りで作り始めたのです。なお、顔は豚鼻のような感じで、鬼っぽくはないものが多いです。
ちなみに、奈良の飛鳥の橘寺にも鎌倉時代の鬼瓦が展示されていました。これも法隆寺のように、建て替え工事の時におろしたものを保管してきたようです。
室町時代には、恐い顔をした鬼になります。とにかく怖くて迫力のある鬼だけど、造形美としては鎌倉時代よりはカッコいいかも!という鬼がデザインされるようになります。

第六章は近世、江戸時代の鬼瓦の紹介です。
この時代は戦乱の時代も終わり、芸術が全般に発達する時期なのですが、鬼瓦も超絶技巧のものが増えていきます。
近くで見ても、驚くほど、精巧な細工です。鬼が中心ですが、獅子や牡丹などのものもあります。
第七章は「鬼瓦の変遷」と称して、鬼瓦の変化をまとめました。また、鬼瓦の裏の形も紹介しました。括り付ける取っ手の形も変化しているのです。
鬼というと節分で追い払われる悪い奴というイメージが強いかもしれませんが、建物を守るための「いい鬼」、あえているなら鬼神が象られているのが、鬼瓦ということです。
次に屋根の上の鬼瓦を眺める時には、そういった眼差しで見てくださったらと思います。
なお、講演会も2回開催され、これらの鬼瓦の来た中国や韓国での鬼瓦の紹介や、ヨーロッパの魔人の彫刻なども紹介されました。
「鬼神乱舞―護る・祓う・鬼瓦の世界」展の展示工夫については、奈良文化財研究所紀要2022にまとめて掲載する予定です。
☆おまけ☆
展示されることはなかったのですが、鬼瓦を復原した瓦工房にお邪魔して、古代風の鬼瓦の復原の様子を見学させてもらう機会がありました。
動画にまとめましたので、ご覧ください。
【下のボタンをクリックで動画のページへジャンプします】